付言事項の書き方のポイントと遺言書の文例
付言事項とは?
付言事項とは、遺言書の遺産の処分などの法律行為以外の条項で、遺言者の思いや気持ちを伝える為に追加する条項のことです。しかし付言事項には法的な効力はありません。
遺言者の思いと相続人のそれぞれの思いが大きく乖離している事が往々にしてあり、相続人間のトラブルとつながります。特に財産分与において法定相続割合と大きく隔たりがあり、遺留分侵害額請求が生じる場合には付言事項で親の思いをしっかり伝える事が兄弟間の争いを回避する上で有効となりえます。
なお、付言事項に否定的な内容を書くことは相続後のトラブルの起因となるので避けましょう。
付言事項の意義
- 家族や遺贈する人への感謝を伝える
子供たちや、または遺贈する嫁や甥姪などにしっかりと感謝の気持ちを伝えましょう。
親子で親の気持ちが十分伝わっているとは限りませんし、逆に子供の気持ちがわからない事もあります。。改めてしっかりと感謝の気持ちを綴っておきましょう。 - 財産の分配理由をしっかりと伝える
昔の家督相続と違い、今は法定で定められた割合が基本であり、それと異なる配分については不満を持つのが当然です。
家を継ぐ長男に多く相続させる場合や、財産が自宅のみで同居する子供に相続させる場合など不公平な分配なケースでは必ず遺留分侵害額請求など兄弟間の争いを起こすこととなります。
なるべく公平に分配する事が重要ですが、どうしても不公平な分配となる場合は生前に話し合いをしておくか、できなければ納得する理由うをしっかり付言事項として残す事が不可欠です。 - 残された配偶者の面倒を依頼する
残された配偶g者の生活の面倒や介護をしてもらう事を依頼し、その分の負担に応じた財産の配分を考慮しておく。
付言事項の書き方・文例
親と同居する長男に多く財産を相続させる場合の付言事項
子が三人いるが親と同居し親の面倒を長年みてくれた長男に自宅を相続させ、ほかの二人の兄弟には法定相続割合より少なく財産を分与する場合
第〇条 付言事項 子供たちに残す財産は自宅とわずかな金融資産だけなので、一郎、次郎、三郎に平等に分ける事ができないのが残念と思っています。 長男太郎とその嫁花子は長年私たちと同居し、また昨年亡くなった寝たきりだった妻の面倒もよく見てくれました。また祭祀承継の役割をしてもらう長男に自宅を相続させ、残りの金融資産を次男と三男に均等に残します。 次郎、三郎は不公平と思うかもしれないが、私の思いを苦慮し遺留分など請求せずこれからも兄弟仲良くして欲しいと願っています。 |
面倒をよくみてくれた相続人ではない嫁に遺贈するときの付言事項の書き方
第〇条 付言事項 長男の嫁千春は長年私たち夫婦と同居し陰ひなたなくよく面倒を見てくれました。感謝の気持ちとして金融資産の一部を嫁千春に遺贈する事にしました。 遺贈する事についてはほかの子供たちも同意してくれるものと思っています。 これからも兄弟仲良く暮らしていってほしいと願っています。 |
寄付遺贈する場合の付言時の書き方・文例
第〇条 付言事項 社会貢献として財産の一部の1億円を交通遺児を支援する〇〇公共団体に寄付します。 親を失って経済的に恵まれない子供たちに少しでも希望が持てるようにと思い寄付遺贈する事としました。 周りの人に助けられてきた人生なので、恩返しの意味で次の世代を担う若者に少しでも手助けになればとの気持ちです。 |
自筆証書遺言書の書き方と作成のポイント
自筆証書遺言を作成するときは民法で定められた要件に従って作成する必要があります。要件を満たしていない場合は遺言書が無効となってしまいますので要件に従って作成しましょう。
自筆証書遺言を作成するときの要件(民法第968条)
民法第968条は平成30年に改正され平成31年1月より施行され、財産目録について自書ではなく、タイプ打ちや登記簿や銀行の通帳などのコピー添付での緩和が行われました。
1.遺言書の全文を自書する。(財産目録は除く)
遺言者自身が遺言の内容、日付、遺言者の署名を全て自書する事。
パソコンで作成したものや代筆してもらったものは無効です。また音声やビデオの映像での遺言も無効です。
2020年度の相続法改正により財産目録における自筆要件は緩和され、添付書面である財産目録についてはパソコン等による作成や遺言者以外の者による代筆が可能となり、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳の写しを添付する事が可能となりました。
2.日付を明記する事
遺言書を作成した日付を必ず自書する必要があります。
令和6年1月3日とか2022年2月4日のように正確に書きます。
令和6年4月吉日など書く場合がありますが作成日が特定できない表現は無効となります。日付のスタンプ等も無効です。
因みに遺言書を複数作成した場合は日付の新しい遺言書が有効となります。
3.署名し押印する
戸籍通りのフルネームで書きます。また正確に人物を特定するため、名前の前に住所を入れるのが望ましいでしょう。
押印は認め印でも問題はありませんが実印がベストです。
4.加除訂正は決められ方式に従う
書き間違いの訂正や追加する場合は法律が定めた方式があり、守らないと無効となります。訂正や追加がある場合はもう一度全て書き直ししたほうがよいでしょう。
自筆証書遺言の書き方・作り方のポイント
民法で定められた要件以外の自筆証書遺言の書き方のポイントは下記のとりです。
1.用紙や書式は自由
用紙や記載内容については特段の要件はありませんが、記載内容は具体的に書き、曖昧な表現を使わないようにしましょう。。
2.財産目録は正確に記入する(自書する場合)
財産目録を自書する場合は正確に記入しましょう。不動産は登記簿通りに書きましょう。間違えると登記できない事があり、遺言通りに実行できなくなってしまいます。
1)不動産の書き方の例
1.土地
所在: 東京都港区白金台3丁目
地番: ○○番○○
地目: 宅地
地籍: 160平方メートル
2.自宅
所在: 東京都港区白金台3丁目
家屋番号:○○番○○
種類: 居宅
構造: 木造瓦葺2階建
床面積: 1階110.5平方メートル
2階80.5平方メートル
2)銀行口座や証券口座の書き方
○○銀行中野支店に有する定期預金
(1)定期預金 口座番号00123456789
(2)普通口座 口座番号98765432100
3.財産目録を自書しない場合(タイプや添付)
財産目録の形式については平成30年の法改正により緩和され、署名押印のほかには特段の定めはありませんので、書式は自由で,遺言者本人や本人以外の人がパソコン等で作成することも可能となりました。
不動産について登記事項証明書を財産目録として添付することや,預貯金について通帳の写しを添付することもできます。
いずれの場合も財産目録の各頁に遺言者が署名押印する必要がありますので,注意しましょう。
4.付言事項を追加しておく。
必須うではありませんが、遺言者の感謝の気持ちなどを追加しておきましょう。
5.遺言執行者を指定する
必須ではありませんが相続手続きをスムーズに進める為に法定相続人以外の第三者を遺言執行者に指定しておくことが望ましいでしょう 。
6.封筒に入れて封印する
法的には規定はありませんが改ざんのリスクを避ける為に自筆証書遺言書は封筒に封印して保存しましょう。確実に遺族が発見できるような場所や貸金庫などの安全な場所に保管がいいでしょう。
平成30年の相続法改正により自筆証書遺言の保管制度が創設され遺言者は法務局に自己の遺言書を保管申請することができます。
法務局の遺言保管官は遺言が遺言の方式を満たしているか外形的審査を行い、データ化して管理されます。