
予備的遺言(補充遺言)とは? トラブル回避に有効な予備的遺言の作成ポイント
予備的遺言(補助的遺言)と予備的遺言の有効性について
予備的遺言とは補充遺言ともいい、遺言で相続または遺贈による受遺者が遺言者より先に亡くなった場合、その部分の遺言書は効力を生じません。(民法994条)
そのような事態を回避するために補充的に追加する遺言の事です。遺言者の意思を実行できる有効な方法です。
民法第994条
1.遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2.停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
予備的遺言の参考サイト
予備的遺言のない場合のトラブル事例と予備的遺言の必要なケース
予備的遺言のない場合のトラブル事例と予備的遺言の必要なケースを解説します。
予備的遺言がない場合のトラブル事例① 長男が急死!相続予定の遺産は誰に?

予備的な遺言の例として、例えば3人の子供がいて先に妻がなくなっている家庭で父親が、同居し祭祀承継者の長男に自宅(9000万相当)を相続させ、次男と三男には金融資産を6000万づつそれぞれ相続させる遺言書を作成した場合、もし父親より長男が先に亡くなってしまったときはどうなるのでしょうか?
父親が亡くなると長男に相続される予定の自宅(9000万相当)は長男が先に亡くなっているので無効となり、代襲者である長男の子(孫)にはそのまま相続財産は継承はされません。
次男と三男は6000万円を遺言書とおりに相続した上で、家屋敷を孫(長男の子)と次男、三男の三人で分割協議をおこなう事となります。
兄弟間で折り合いが悪く次男、三男が法定相続割合分を主張すれば9000万相当の1/3の3000万のみを孫(長男の子)が相続し、次男と三男は9000万(6000万+3000万)づつ相続する事となります。
父親の『兄弟なるべく平等に』との思いで作成した遺言書でしたが、長男の急死で父親(遺言者)の意図とは全く違った相続になってしまいました。
それを回避する為には予備的遺言を追加しておくことが非常に重要です。
予備的遺言がない場合のトラブル事例② 遺贈予定の姪が急死!
横浜に在住の86歳の子供がなく、兄弟もいない独り身男性Aさんが、親から受け継いだアパート3棟を所有しています。
亡くなった母親の姉の子で50才代のBさんがおり、よく面倒をみてくれていたので、アパートを含む全ての財産をBさんに遺贈する旨の公正証書遺言を作成しました。
ところが遺言書を作成した4年後にBさんは病気で急死してしまいました。
このケースでは遺言書作成したAさんが未だ健在でしたので、再度遺言書を作成しなおして別の母親の姉の子のCさんDさんに遺贈する事となりました。
もしBさんが急死したときに、遺言者のAさんが意思能力なく、遺言書を新たに作成できず亡くなってしまった場合はAさんの遺産は遺贈される予定だったBさんが既に亡くなっているので、相続人や受遺者が不存在となり、遺言者Aさんの思いとは違って、Aさんの遺産は全て国庫に帰属する事になってしまいます。
予備的遺言が必要な主なケースとは
- 近年は遺言書を若いときに作成する傾向もあり、早めに遺言書を作成する場合。
- 遺言者と相続人または受遺者との年齢が近い場合や健康に不安がある場合。
- 不測の災害、病気など想定外の事がおきる事は稀ではないので上記の理由に関わらず付言事項を追加しておく事が重要です。
予備的遺言はどこまで指定しておくべきか?
予備的遺言はどこまで指定しておくべきかはケースバイケースですが、例えば長男が先になくなっていれば子供に、子供がなくなっていれば姪のA子にといくつも指定しても有効です。状況により複数人指定しておくことも重要です。
公正証書遺言で予備的遺言を記載するときに必要となる書類
公正証書で遺言書の作成するときに予備的遺言を追加記載する場合は予備的遺言に入れる方の名前、生年月日、住所、遺言者との続柄などが分かる戸籍謄本(発行3カ月以内)が必要となります。
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予備的遺言(補充遺言)の文例① 親より先に子が亡くなったときはその孫へ
長男に自宅を相続する場合に予備的遺言として孫(長男の子)に相続させる文例です。
遺 言書 遺言者宇田川一郎は次の通り遺言する。 第1条 遺言者は遺言者が有する不動産を長男宇田川太郎(昭和○○年○月○日生)に相続させる。 (1)所在 東京都渋谷区渋谷○丁目 地番 ○○番○○ 地目 宅地 地積 250.23平方メートル (2)所在 東京都渋谷区渋谷○丁目 家屋 番号 ○番○ 種類 居宅 構造 木造瓦葺壱階建 床面積 壱階 74.45平方メートル 第2条 遺言者の前に長男宇田川太郎が死亡したとき、または遺言者と同時に死亡したときは 宇田川太郎の長男宇田川修一郎(平成○○年○月○日生)に前条記載の財産を相続させる。 第3条 遺言者は○○銀行渋谷支店に有する下記の定期預金を次宇田川次郎(昭和○○年○月○日生) に相続させる。 (1)定期預金 口座番号00123456789 第4条 遺言者は○○銀行渋谷支店に有する下記の定期預金を三男宇田川三郎(昭和○○年○月 ○日生)に相続させる。 (1)定期預金 口座番号98765432100 第5条 遺言者は遺言執行者ととして下記の者を指定する。 (事務所) 東京都港区赤坂1-1-1 (職業) 弁護士 (氏名) 塩田一郎 (生年月日)平成○○年○月○日 令和○○年○月○日 東京都渋谷区渋谷○丁目○番○号 遺言者 宇田川 一郎 印 |
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予備的遺言(補充遺言)の文例② 子供のいない夫婦が妻に全部渡す遺言書を作成したときの予備的遺言の文例
遺 言 書 遺言者中野太郎は次の通り遺言する。 第1条 遺言者は所有する全ての財産を妻である中野洋子(昭和○○年○月○日生)に相続させる。 第2条 遺言者の前に妻洋子が死亡したとき、または遺言者と同時に死亡したときは妹の長男 田中太一(令和〇〇年〇〇月○〇日生)に遺言者所有の全財産を相続させる。 第3条 遺言者はこの遺言の執行者として下記の者を指定する。 (事務所) 東京都港区赤坂1-1-1 (職業) 弁護士 (氏名) 塩田一郎 (生年月日)昭和○○年○月○日 令和○○年○月○日 東京都港区白金台2丁目○番○号 遺言者 中野 太郎 印 |
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自筆証書遺言書の書き方と作成のポイント
自筆証書遺言を作成するときは民法で定められた要件に従って作成する必要があります。要件を満たしていない場合は遺言書が無効となってしまいますので要件に従って作成しましょう。
自筆証書遺言を作成するときの要件(民法第968条)
民法第968条は平成30年に改正され平成31年1月より施行され、財産目録について自書ではなく、タイプ打ちや登記簿や銀行の通帳などのコピー添付での緩和が行われました。
1.遺言書の全文を自書する。(財産目録は除く)
遺言者自身が遺言の内容、日付、遺言者の署名を全て自書する事。
パソコンで作成したものや代筆してもらったものは無効です。また音声やビデオの映像での遺言も無効です。
2020年度の相続法改正により財産目録における自筆要件は緩和され、添付書面である財産目録についてはパソコン等による作成や遺言者以外の者による代筆が可能となり、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳の写しを添付する事が可能となりました。
2.日付を明記する事
遺言書を作成した日付を必ず自書する必要があります。
令和6年1月3日とか2022年2月4日のように正確に書きます。
令和6年4月吉日など書く場合がありますが作成日が特定できない表現は無効となります。日付のスタンプ等も無効です。
因みに遺言書を複数作成した場合は日付の新しい遺言書が有効となります。
3.署名し押印する
戸籍通りのフルネームで書きます。また正確に人物を特定するため、名前の前に住所を入れるのが望ましいでしょう。
押印は認め印でも問題はありませんが実印がベストです。
4.加除訂正は決められ方式に従う
書き間違いの訂正や追加する場合は法律が定めた方式があり、守らないと無効となります。訂正や追加がある場合はもう一度全て書き直ししたほうがよいでしょう。
自筆証書遺言の書き方・作り方のポイント
民法で定められた要件以外の自筆証書遺言の書き方のポイントは下記のとりです。
1.用紙や書式は自由
用紙や記載内容については特段の要件はありませんが、記載内容は具体的に書き、曖昧な表現を使わないようにしましょう。。
2.財産目録は正確に記入する(自書する場合)
財産目録を自書する場合は正確に記入しましょう。不動産は登記簿通りに書きましょう。間違えると登記できない事があり、遺言通りに実行できなくなってしまいます。
1)不動産の書き方の例
1.土地
所在: 東京都港区白金台3丁目
地番: ○○番○○
地目: 宅地
地籍: 160平方メートル
2.自宅
所在: 東京都港区白金台3丁目
家屋番号:○○番○○
種類: 居宅
構造: 木造瓦葺2階建
床面積: 1階110.5平方メートル
2階80.5平方メートル
2)銀行口座や証券口座の書き方
○○銀行中野支店に有する定期預金
(1)定期預金 口座番号00123456789
(2)普通口座 口座番号98765432100
3.財産目録を自書しない場合(タイプや添付)
財産目録の形式については平成30年の法改正により緩和され、署名押印のほかには特段の定めはありませんので、書式は自由で,遺言者本人や本人以外の人がパソコン等で作成することも可能となりました。
不動産について登記事項証明書を財産目録として添付することや,預貯金について通帳の写しを添付することもできます。
いずれの場合も財産目録の各頁に遺言者が署名押印する必要がありますので,注意しましょう。
4.付言事項を追加しておく。
必須うではありませんが、遺言者の感謝の気持ちなどを追加しておきましょう。
5.遺言執行者を指定する
必須ではありませんが相続手続きをスムーズに進める為に法定相続人以外の第三者を遺言執行者に指定しておくことが望ましいでしょう 。
6.封筒に入れて封印する
法的には規定はありませんが改ざんのリスクを避ける為に自筆証書遺言書は封筒に封印して保存しましょう。確実に遺族が発見できるような場所や貸金庫などの安全な場所に保管がいいでしょう。
平成30年の相続法改正により自筆証書遺言の保管制度が創設され遺言者は法務局に自己の遺言書を保管申請することができます。
法務局の遺言保管官は遺言が遺言の方式を満たしているか外形的審査を行い、データ化して管理されます。
自筆証書遺言の書き方・サンプル

